まんがタイムきらら 2024年6~8月号に掲載された4コマ漫画です。 中世ドイツを舞台に、主人公の少女「ニコル」たちの日々が描かれます。 ここでは前半部分を試し読みとして掲載します。続きは同人誌で!

解説 Juno
はじめに
「まんがタイムきらら」にてゲスト掲載された「こもれびシュトラーセ」は中世ドイツを舞台にした祈り働く少女たちの活劇譚だ。夕凪先生の可愛い絵柄と洋ゲー並みに写実的な荒廃した修道院のギャップが愛くるしい快作である。私はというと、この作品が世に出るのをもしかしたら夕凪先生、夕凪先生の担当編集さんの次くらいに楽しみにしており、喜んでおり、そして応援している読者と言っても過言ではない。まさかあのきららに中世ドイツが載るとは……ゆゆ式、きんモザ、ひだまりスケッチ、けいおん、キルミーベイベーのきららだぞ……中欧のビールとミードと葡萄酒、燻した肉の匂いと最も無縁な雑誌だと勝手に思い込んでいたのでこの時点で既に作品そのものがエポックメイキング的である。特異点こもれびシュトラーセ。シュトラーセは「街道」なのである意味で正しい。 ちなみにこの「こもれび」、日本語に特有の表現として名高い。余談だが筆者はこの「こもれび」が意図するところが辞書的には日=太陽光だが、人が見ているのは木の葉の造形が投影された影の方なのではないか、とかつて日本オタクのドイツ人に訊かれたことがあり、しらね〜〜〜と思いながらBlätterschatten(葉の影)と訳して事なきを得た(?)ことがある。ニコルたちの歩む道は光なのか影なのか、ぜひ想像しながら今後も読み進めたい。
本稿ではエピソードに関連する小ネタ的なことをバーっと書いていきたい。まずは本編を読んでからご覧ください。
Komorebiの表記について
ドイツ語ではなんか基本カ行の音を表すのにKで表現する。coffee→Kaffeeだし、combination→Kombination である。なのでcomorebiよりはKomorebiのほうが…というお話をしたりした。だがこれもおそらくは正書法に則ったものなので、中世はおろか近世近代のドイツでもCでカ行音を表した例がないわけではない。 例を挙げるとグリム兄弟でお馴染みの街カッセルはもちろんKasselと表記するが、古くはCasselと書いたらしい(現地で見た)。まあ標準ドイツ語自体が人為的なものですし…と魔法の言い訳をする。 逆に日本語話者からするとßは身近ではないし、いかにもドイツ語という単語。つまり日本語にしかない単語+ドイツ語らしい単語、タイトルからして勝ち確というやつです。
中世ドイツの風景
ドイツというと普通は平原なんですが、「のどかな河畔」は細かい丘に囲まれていてなんとなく日本的に見える。そう、ドイツにはそのへんに山などない。最高峰は一応ツークシュピッツェでオーストリアとの国境地帯に位置するが、高い山はほぼ南部のアルプス付近に集中しており、日本のようにそこかしこに山があるわけではない。だがもちろん夕凪先生がそんな作画ミスめいたことをするわけがない。むしろ逆に、この「のどかな河畔」がどこなのかを説明や固有名詞なしに伝える高等テクニックと言っていい。この明らかに日当たりが良く日照時間も確保できる、葡萄の育成に適していそうな川はそう……ワインに詳しい有識者の方にはもうお分かりかもしれない。あの川である。一コマ目からずいぶんと高度なギミック。そして話の根幹をなすのは水運。川は中世ドイツの社会と産業を語る上で欠かせない要素であり、交易路という意味ではここもまたシュトラーセ(街道)なのである。深い。
シュネーバル
うまい。極寒のドイツの冬はこれとホットチョコレートでブチ上がるしかない。とはいえ伝統的には割と南の方のエリアのお菓子であり、筆者は南には旅行程度でしか行ったことがないので馴染みがあるお菓子というほどではない。ノイシュヴァインシュタイン城から麓に帰ってくる途中のスタンドに売ってたことは覚えてる(うまかった)。日本から観光先として人気のローテンブルクなんかでも見覚えがある。見つけた際はぜひ召し上がってみては。原理はかりんとうと同じのはずだが、ずいぶん趣が違う気が。 砂糖に関しては当時超貴重品だったはずだが、修道院ならば砂糖くらいあるだろう! 困窮してるらしいけど。とはいえこの修道院、おそらくバックに超VIPがいるのでとてつもないお宝を持っている可能性は多分にあるのだ。詳しくは後述。
漫画執筆時に、レシピを調べて自宅で作ってみたシュネーバルです。ドイツで売られているものはもっと大きいみたいです。(夕凪ショウ)
漫画本編と解説の続きは、同人誌「こもれびシュトラーセ」に掲載予定です! ゲームマーケット2025秋とコミティア154での頒布をお楽しみに♪